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IT As-a-Service: これからも生き残るIT部門が提供する価値とは
今回は、ヒューレットパッカードエンタープライズPointnextアドバイザリーサービスディレクターのトビー・ウェイスのブログをご紹介します。 トビーは様々な企業でデータセンター、クラウド、およびITトランスフォーメーション分野のポートフォリオ戦略を指揮してきました。現在は、クラウドの導入を通じたデジタルエンタープライズへの進化を支援するべく、グローバルなポートフォリオエンジニアリングチームおよびイネーブルメントチームを率いています。
以下、トビーのブログ記事をご紹介します。
IT As-a-Service: これからも生き残るIT部門が提供する価値とは
Toby Weiss | 2017年6月4日
現在多くの企業において、IT部門の業務を迅速化および効率化してビジネスや業績に貢献できるようにするための取り組みが進められています。その詳細を見ていきましょう。
まずは、皆さんがお気に入りのレストランを前回訪れたときのことを思い出してください。豊富なメニューから料理を選ぶことができましたか?料理は価格に照らして満足できる内容でしたか?妥当な待ち時間でおいしい料理が提供されましたか?そのレストランが皆さんのお気に入りであるからには、これらの質問に対する答えはいずれも「イエス」のはずでしょう。
次に皆さんの会社のIT部門によるサービス提供について思い出してください。
さまざまなITサービスの中から目的に最適なサービスを選ぶことができましたか?余計なコストをかけることなく必要なITサービスを利用できましたか?依頼から完了までのプロセス全体はスピーディでしたか?
すべての質問に対する答えが「イエス」の場合、その企業のIT部門は極めて優秀であり、いわゆる「IT As-a-Service」が実現されているはずです。こうしたサービスモデルに移行した企業では、ITの標準化、統合、および仮想化が促進されます。事業部門は個々のニーズに合わせて設計されたソフトウェアサービスやハードウェア構成のカタログから、必要なITサービスを選択できます。またIT部門は、縦割り組織でさまざまなプロジェクトに場当たり的に (かつ長い時間をかけて) 取り組む代わりに、事業部門のニーズに柔軟かつ迅速に応えることが可能になります。
一般の消費者が商品やサービスの購入先を豊富な選択肢の中から選べるように、今日の企業は業務に必要なITを調達する際に広範なオプションから選択することが可能になりました。この1つのシンプルな変化によって、ITを取り巻く環境は劇的に変わりつつあります。簡単に言えば、今日のIT部門は競争にさらされています。従来の技術的リーダーとしての役割に固執するIT部門は、時代に取り残されてしまいます。
IT As-a-Serviceのコンセプトの背後にある思想はシンプルで、事業部門に豊富な選択肢を提供し、余分なコストをかけずに必要なサービスを迅速に利用できるようにするというものです。このモデルにおいて、ITは厳格に管理するというよりも、ビジネスに貢献するために運用されます。すなわちIT部門は事業部門の代理人として、最善の価格の最善のテクノロジーを見出し、サービスレベル契約 (SLA) の交渉にあたり、初期のリクエストから最終結果のサポートに至るまでITを調整する役割を担います。
クラウドコンピューティングの登場により、今日では大多数の企業でハイブリッドITモデルが採用されており、レガシーなシステム、クラウドコンピューティング、および社内外のITの組み合わせが使用されています。IT部門の新たな役割として、これらすべての選択肢の担当となることを求められています。IT As-a-Serviceモデルがどのように機能するかについては、後述の「Otto GroupのITチームによるサービスジョブの統合」をご覧ください。
しかしながらAs-a-Serviceモデルへの移行は決して平坦な道のりではなく、増え続ける外部パートナーや可変する要素に対処するため、従来とは大きく異なるマインドセットが求められます。また、サービス指向モデルへの移行にあたっては、ロードマップの策定が欠かせません。HPEには、これまで数多くの組織の移行を支援してきた実績がありますので、適切なアドバイスを提供することが可能です。
IT環境の変革の必要性を感じてはいるものの、どこから着手すべきかにお悩みではありませんか。シンプルなハイブリッドITの構築とインテリジェントエッジの強化のための革新的なITサービス組織であるHPE Pointnextにぜひご相談ください。
ITaaSへの移行を支える7つの重点領域
HPEは数百ものIT環境の変革のプロジェクトに関与してきた経験に基づき、トランスフォーメーション戦略において留意すべき7つの主要な領域を特定しました。リーダーシップチームが、これらの領域の改善を1つでもおろそかにすると、真のトランスフォーメーションを実現することはできません。
真のデジタル企業へと進化して、IT As-a-Serviceの価値を最大限に引き出すためには、以下のすべての領域に取り組むことが必要です。
- ITインフラストラクチャとアーキテクチャー: IT As-a-Serviceモデルへの移行は、エンタープライズインフラストラクチャアーキテクチャーに対する考え方の抜本的な見直しを意味します。すなわち従来のようなプロジェクト中心のアーキテクチャーではなく、重要なビジネスサービスを中心としたアーキテクチャーの構築が求められます。そのためにはハードウェアから顧客のビジネスニーズへと焦点を移行することが必要です。
- IT管理フレームワーク: この領域に関しても、ITリーダーは、資産やプロジェクトからサービスアーキテクチャーへと焦点を移行する必要があります。加えて、リーダーはサードパーティとのやり取りの増加に合わせて、セキュリティ、ネットワーク、およびリスク管理に関するポリシーを再考しなければなりません。
- 財務: As-a-ServiceモデルはITの財務モデルを根本から変革します。従量制の料金モデルには、従来の料金モデルに比べてはるかに多くの可変要素が関与するため、料金設定はより難しくなります。例えば、料金を低く設定し過ぎるとIT運用が赤字に陥りますが、料金を高く設定し過ぎると事業部門はよりコスト効果の高い外部プロバイダーを選択するようになります。
- 文化/人材: IT As-a-Serviceへの移行はITスペシャリストの反発にあいがちです。非常にテクニカルで現場主義の専門家は、ITの提供よりも管理に重点を置いたサービス指向の文化に移行するために必要なスキルや気質を有していないケースが少なくありません。この問題に関してトレーニングは一定の効果を発揮するものの、適切なトレーニングによっても、サービス指向の文化に必要なスキルをすべての従業員に習得させるのは困難です。そのため適切なスキルを有する人材を新たに雇用したり、一部の職務をアウトソーシングしたりすることも検討する必要があります。
- プロセス: ビジネスユーザーにとってITは実現のためのツールであり、最終目標ではありません。ビジネスユーザーにより大きな価値を提供するために、ITリーダーは社内プロセスの一貫性と俊敏性を向上させる必要があります。システムの停止といった予期せぬ事態への対処方法や成功の測定方法をあらかじめ決定しておくと、顧客満足度のアップに効果的です。
- サービス管理: 大多数のIT部門はシステム管理能力には優れており、例えばどの程度の稼働率で何台のサーバーが必要かを把握しています。しかしながらこれからのITプロフェッショナルは、ビジネスユーザーの代理としてSLAの交渉にあたれるように、ビジネス用語やロジックにも精通している必要があります。技術的な知識の重要性に変わりはありませんが、これからのITプロフェッショナルにはビジネスの知識も必要です。
- アプリケーション管理:通常、事業部門が保有しているアプリケーションについても、管理はIT部門が行う傾向にあります。大切なことは、アプリケーションに関する料金モデルやサポート契約について事業部門の賛同を得ておくことです。さもなければ、どれほど適切に交渉されたものであってもSLAが争点になる可能性があります。ITスタッフは、社内のアプリケーション全体を適切に管理するために、ビジネスユーザーの最終目標や要件を明確に把握しておく必要があります。
IT As-a-Serviceモデルへの変革事例
IT As-a-Serviceは、企業が (サイロ化されて俊敏性に欠ける) 旧来のモデルから脱却し、より顧客中心のモデルに移行することを可能にします。Otto Groupはこうした改革に取り組んでいる企業の1つで、デジタル企業への進化に向けてITの変革を推進しています。事業部門がさまざまな外部オプションやサービスプロバイダーを利用できる現在、IT部門はその能力をより一層高めることを求められています。
今日のIT環境はビジネス環境の変化に合わせた進化を遂げつつあります。企業が勝者となるためには、非常に柔軟かつサービス指向のIT環境の構築が欠かせません。
Otto GroupのITチームによるサービスジョブの統合
Otto GroupのIT担当バイスプレジデントであるAlexander Hauser氏は悩みを抱えていました。このグローバルな大手小売グループにおいて、傘下の子会社はHauser氏が率いるIT部門を利用する義務を負っていません。「そのため我々は外部のサービスプロバイダーとの直接的な競争にさらされていました」とHauser氏は振り返ります。内部のITチームと外部のプロバイダーを比較した結果、同氏はITチームが求められる水準に達していないことがわかりました。問題点の1つとして、内部のITチームによるデータベース、ネットワーク、およびその他の領域のハードウェアやサービスの提供には時間がかかり過ぎていました。「当グループの企業は、オンラインストアなどの新しいサービスをお客様に迅速に提供する必要があります」とHauser氏は述べています。「今日のビジネス環境において、こうしたタスクのための新規サーバーの提供に2ヶ月もかかるなんてありえないことなのです」。
Otto GroupのIT責任者を務めるFranck Borchard氏も、同様に変化の必要性を認識しており、「従来のITデリバリモデルを完全にモダナイズ(最新化)しなければならないことは明らかでした」と述べています。そのため同グループは、HPEのトランスフォーメーションフレームワークを利用して、アーキテクチャーやテクノロジーだけでなく、サービスポートフォリオ、組織と文化、運用とソフトウェア開発プロセス、およびガバナンスのトランスフォーメーションにも着手しました。Otto Groupが求めていたのは真のITトランスフォーメーションです。
HPEとともにトランスフォーメーションに取り組んだ結果、Otto Group ITは新しいインフラストラクチャサービスの提供に要する時間を90%短縮することに成功しました。「ITデリバリ時間の短縮は、Otto Group傘下の企業が各自のプロジェクト (すなわちイノベーション) を従来よりもはるかに迅速に実現できることを意味します」とBorchard氏は指摘します。「その中には、当グループ内にとって最優先事項であるデジタルトランスフォーメーションに関係する数々のプロジェクトも含まれています」。
さらに得られた成果はデリバリ時間の短縮だけにとどまりません。Otto Group ITは、トランスフォーメーションを通じて運用コストを約40%削減することに成功し、コスト削減のメリットは顧客にも還元されています。改善の影響は広範囲に及んでおり、Otto Group ITは、これまで同組織を利用していなかったグループ傘下の企業とも新たに契約を結んでいます。
こうしたトランスフォーメーションの結果、Hauser氏の悩みは大きく軽減されました。
IT As-a-Service実現に向けて
IT As-a-Serviceは、内部顧客に豊富な選択肢を提供し、余分な料金を支払うことなく必要なIT機能を迅速に利用することを可能にします。
サービス指向モデルの実装は決して容易ではなく、より多くの外部パートナーや可変要素に対処するためのロードマップや新しいマインドセットが必要になります。
そして、サービス指向モデルを適切に実装するためには、インフラストラクチャからアプリケーション管理まで、7つの主要な領域に重点を置いた戦略の策定が欠かせません。
著者について: Toby Weiss
ヒューレット・パッカード エンタープライズ、Pointnextアドバイザリサービス、ハイブリッドクラウドポートフォリオ担当ワールドワイドディレクター
トビーは経験豊富なFortune 10エグゼクティブで、地域およびグローバルな役職の両方で確かな実績を有します。過去17年以上にわたりトビーは複数の企業で、データセンター、クラウド、およびITトランスフォーメーション戦略を先導してきました。トビーは、お客様がクラウド導入戦略を策定し、デジタルエンタープライズに向けたトランスフォーメーションを推進できるよう支援することに情熱を注いでいます。トビーはこれまで文化の異なる世界中のさまざまな組織で、迅速かつ動的なクラウドベースの環境の実現に向けて、ITサービスポートフォリオを構築および刷新してきました。現在は、クラウドの導入を通じたデジタルエンタープライズへの進化を支援するべく、グローバルなポートフォリオエンジニアリングチームおよびイネーブルメントチームを率いています。また過去には、機能横断型のフィールドチームのリーダーとして、Forrester社が「商業的に実現可能な初のソフトウェア・デファインド・データセンターソリューション」と呼ぶポートフォリオを展開した実績も有します。トビーはお客様と緊密に連携し、HPE Pointnextの専門家が保有する戦略上および技術上のノウハウをお客様の組織全体にわたって活用することで、テクノロジー、人員、およびプロセスを向上させることに力を入れています。トビーはDeVry Institute of Technologyで電子工学の理学士号を取得しており、またITガバナンス、ITプロジェクト管理、高度なプロジェクト計画とリスク管理、およびその他のさまざまなビジネス管理の分野で高度なトレーニングを積んでいます。
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