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lingyu

【連載】Microsoft Azure Stack入門――第3回 Azure Stackのユースケース(下)

こんにちは。HPE Azure Stack担当の凌です。

前回に続き、Azure Stackの他のユースケースをご紹介していきたいと思います。

 

ユースケース② エッジ処理によるエクスペリエンスの向上

 パブリッククラウドのもう一つの魅力は、IoTAIといった最先端技術をすぐ利用できるところにあります。ただし、特にIoTの場合、生成される膨大なデータ量をネットワーク越しで利用すると、どうしてもレイテンシーやパフォーマンスに引っかかることがあるかもしれません。例えば、IoT工場生産におけるパーツ製造や欠品チェックの自動化などでの採用が加速し、近年爆発的に増加するスマートフォンなどのポータブルデバイスやドローン、拡張現実(AR)と混合現実(MR)、仮想現実(VR)など、エッジデバイスと密接に関わるワークロードは破竹の勢いで増え続けています。ここで生成される莫大なデータをすべてパブリッククラウドで処理すると、膨大なネットワーク転送量によるコスト増はもちろんのこと、データの転送・処理・結果を返すまでのリードタイムもネットワークの帯域幅によって制限され、リアルタイムの処理ができず、レスポンスに影響するなど、いくつか限界があります。

そこで、先にエッジ側で一部の処理を行う必要性も自然に生まれてきます。「IoTエッジデバイス」として製品化されている小型コンピューターもありますが、スペックの制限で対応可能なアプリやシステムに制約があります。ここで、Azure Stackをエンドポイントに近い拠点に置き、クラウド系BIやパワーが必要なパッケージアプリをクラウドネイティブな機能を使ってデータ収集・解析・処理すると、サービスのレスポンスやパフォーマンスの向上が見込めるでしょう。

現時点で、Azure StackにはまだAzure側のすべての機能が使えるわけではありません。例えば、Azure Cognitive Serviceといった機械学習やディープラーニングのAIサービスは、Microsoft社で膨大なデータが蓄積されているため、数多くの学習済みモデルを簡単に利用できますが、Azure Stackにはまだ実装されていません。もしこういったモデルを使ってAzure Stackで一時処理されたデータをさらに分析したい場合、自社で大量のデータを用意して学習する必要がなく、Azureで蓄積されたナレッジを活用すれば効率的です。2.png

  

ユースケース③ パフォーマンスの向上とアジャイル開発の実現

こちらのユースケースは、パブリッククラウドのAzureとの併用です。

Azure StackはAzureを移植する形で作られているため、両者には一貫性があり、同じ運用・開発手法が利用できるという最大のメリットがあります。そのため、片側で培ったノウハウやナレッジをそのままもう片方に流用することが可能です。

具体的には、Azure側で開発したコードやテンプレートを最低限の変更(パラメータやデプロイ先、APIバージョンなど)はAzure Stackでも再利用できます。例えば、協力会社やグループ企業と協力してアプリケーションを開発やテストを行う際に、本番環境としてセキュアに用意したAzure Stackに直接アクセスさせたくないといった場合では、短期契約できるAzureで作業してもらうというハイブリッドな使い方を可能になります。

その他、ゲーム会社やECサイトなど、キャンペーンやセールなどのピーク時にアクセスが急増した場合、別途オンプレで予備のハードウェアを用意する必要がなく、Azureにスケールアウトしてトラフィックを分散するなど、一時的な緊急対策として利用することもできます。

3.png

 

最近、マイクロソフト社より、AzureとAzure Stackにおけるアプリ開発のサンプルソシューションが公開されました(https://azure.microsoft.com/en-us/solutions/hybrid-cloud-app/)。ハイブリッドクラウド環境でのアプリケーション開発をより具体的に検討されたい方は、ぜひ参考にしていただければと思います。

もちろん、Azure Stackの使い方はこれだけに限ることではありません。すでにPivotal社がPivotal Cloud Foundry v2.2にてAzure Stackをサポートすると発表しており[1]、マイクロソフト社もAzure IoT HubとDevice Provisioning ServiceをAzure Stackに移植することを発表しています[2]

 

次々に機能強化されていくAzure Stack。その可能性にご期待ください。

 


[1] https://content.pivotal.io/blog/hybrid-cloud-without-the-stress-pcf-on-azure-stack

[2] https://blogs.microsoft.com/iot/2018/04/23/hannover-messe-2018-manufacturers-put-their-trust-in-microsofts-industrial-iot-platform/

 

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作者について

lingyu

Hybrid IT製品を担当するソリューションアーキテクトの凌宇(リン ユー)です。 Microsoft Azure及びAzure Stackに関する情報発信、ソリューション開発について不定期にお伝えします。