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lingyu

【連載】Microsoft Azure Stack入門――第5回 Azure Stackアプライアンス構成とハードウェア管理

こんにちは、HPE Azure Stack担当の凌です。

ここまでの連載で、「Azure Stack」というソフトウェアのイメージを掴んでいただけましたでしょうか。

Azure Stackはアプライアンス製品のため、ソフトウェアを単体購入することはできず、対応ハードウェアとセットで購入する必要があります。販売元のハードウェアベンダーは数社あり、まとめて「OEMベンダー」と呼ばれております。今回はHPE版を例に、Azure Stackのハードウェア構成と管理について解説していきます。

                        

アプライアンスの全体構成

Azure Stackはアプライアンスであり、加えて現時点ではマイクロソフト社より厳格なガイドラインが敷かれているために、大まかなハードウェア構成は各OEMベンダー間でそれほど差がありません。

HPE版Azure Stackを例とすると、図1のようになります。図1. HPE版Azure Stackのハードウェア構成図1. HPE版Azure Stackのハードウェア構成

主要なコンポーネントは下記4種になります。

コンピュートノード

Azure Stackのシステムが稼働するサーバー、仮想化・HCI構成。

従来クラスタに相当する「スケールユニット」という単位でグルーピングされ、1スケールユニット当たり最低4ノード、最大12ノード(2018年9月時点)、将来的に16ノードまで拡張可能。

現時点では1つのリージョンあたり、1スケールユニットのみをサポート。
将来は1リージョンあたり複数のスケールユニット(ラック障害を考慮)や、マルチリージョン(DR対策)もサポート予定。

コンピュートノードにおけるHPEの特長は、S/M/Lのようなサイズ分けではなく、CPU・メモリ・ディスクなどの各パーツを自由に・柔軟に組み合わせることができ、これによって予算削減や要件に応じた最適なシステムを構成することができます。

詳細は下記QuickSpecsをご覧ください。
https://h20195.www2.hpe.com/v2/gethtml.aspx?docname=a00043500enw

ハードウェアライフサイクルホスト(HLH)

Azure Stackハードウェアの管理ノード。アプライアンス1セットあたり1台。

ハードウェアの監視・管理だけでなく、デバイスドライバやファームウェアの更新管理も担う。

HPEのHLHには、最新の統合管理ツール「OneView」が実装され、シンプルで見やすい日本語UIで状態表示ができる。HPE HLHに障害が発生してもAzure Stackそのものには影響しない。この際は専用のISOイメージにより再構築する。

ネットワークスイッチ

管理系スイッチ(BMCスイッチ)×1台と業務系スイッチ(ToRスイッチ)×2台。

ToRスイッチはBGP(Border Gateway Protocol))ルーティングプロトコルを利用できるLayer-3対応かつ10Gbps以上モデルが必要。

コンピュートノード1台あたり10Gbps以上の帯域で2本接続する。Azure Stackではシステム系トラフィック(管理やHCIストレージ)や業務系トラフィックをこの2本ですべて賄う。このため、HPEのGen10モデルでは25Gbps規格ネットワークを採用している。

BMCスイッチはOut-of-Bandによるハードウェアヘルス管理用回線。iLOなどのIPMIポートに接続する。

構築サービス

Azure Stackはアプライアンスであることから、一般的なサーバー製品と違ってメーカー構築サービスが含まれる。本来はメーカー工場にてすべてソフトウェアをプリインストールして出荷すべきところあるが、Active Directory関連など現地で作業しなければならない部分もあるため、現地で“最後の仕上げ”作業が行われる。

お客様へお渡しする際は、Azure Stackのポータルが利用可能な状態となっている。

  

Azure Stackハードウェアの運用管理

運用管理ポータルはソフトウェアとハードウェアで個別最適化されています。

ソフトウェアレイヤのポータルについては前回ご紹介したとおりです。ハードウェアレイヤについて前述のとおり管理ノード(HLH)に内蔵されている各OEMベンダーの独自のツールを利用されます。

HPEモデルで搭載させているのは「HPE OneView」と呼ばれる最新のインフラ統合管理ツールです(図2)。図2. HPEモデルで利用される管理ツール「HPE OneView」図2. HPEモデルで利用される管理ツール「HPE OneView」 

OneView仮想アプライアンス

  • ブラウザからシンプルにアクセスできるHTML5対応に対応した、見やすいダッシュボード画面(日本語)
  • サーバーテンプレートプロファイルでインフラ設定をコード化し(Infrastructure as Code)、複数のサーバーの構成変更を一度に制御可能。それによるリソースの一括設定やノード増設時の作業時間を大幅に削減

 

OneView Remote Support

  • OneViewに内蔵されるCall Homeエージェント
  • サーバー、スイッチ、iPDU等のハードウェアに異常が見られた場合に、自律的にHPEサポートセンターへの自動通報
  • すべてのデバイスをチェックし、HPE の有効な標準保証またはサポート契約を確認

 

ここで操作画面のビデオも作成しましたので、ご興味のある方はぜひご覧ください。

 

前述のとおり、HPE OneViewはREST APIもサポートしています。System CenterやAzure Log Analyticsなどのマイクロソフト製ツールとも統合可能で、オンプレミス環境もハイブリッド環境も、一つの管理ツールでソフトウェアレイヤからハードウェアレイヤまでシームレスに管理することが可能です。

これもHPE版Azure Stackの1つの魅力と言えるでしょう。図3. HPE OneView for Azure Log Analytics図3. HPE OneView for Azure Log Analytics

  

Azure Stackのシステム監視アーキテクチャー

Azure Stackの構成及び運用管理の部分を抽象化したアーキテクチャーは図4のとおりです。

システム監視としては、コンポーネントに応じたエンジンが利用されます。

Azure Stackソフトウェア: Health Resource Provider(ソフトウェア内蔵の監視モジュール)

コンピュートノード: OEMベンダーが提供する管理機能(例:HPE OneViewやiLOなど)

ストレージ: ※HCI構成のため、ストレージもコンピュートノード側で監視されます

ネットワークスイッチ: SNMP Trap

 

外部の監視マネージャーより統合管理を行いたい場合に備えて、各々REST APIに対応しています。図4. Azure Stackのシステム監視アーキテクチャー図4. Azure Stackのシステム監視アーキテクチャー

  

次回はいよいよ連載最終回!

Azure Stackの導入を本格的に検討する際、特に注意すべきポイントについて解説する予定です。

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作者について

lingyu

Hybrid IT製品を担当するソリューションアーキテクトの凌宇(リン ユー)です。 Microsoft Azure及びAzure Stackに関する情報発信、ソリューション開発について不定期にお伝えします。