Discover 2016 Las Vegas レポート（前編） ～ 新生 HPE のコーポレート戦略と「変革」事例

[ogawad]

こんにちは。テクノロジーエバンジェリストの小川大地です。

Hewlett Packard Enterprise (HPE) の日本本社にはいくつかのセミナールームがいくつかありますが、実は数か月くらい前でないと日中の予約は取れないほど、毎日のようにセミナー・イベントが行われています。

これを全世界に広げると、まったく数えきれない数になりますが、その中でも最大のものは Discover と呼ばれる HPE 年次イベントの米国開催です。

そして今回の「Discover 2016 Las Vegas」 は、
新生 HPE 初めての Discover 米国開催ということもあり、会社の新戦略から、サーバー・ストレージ・ネットワーク・ソフトウェアなどの製品ロードマップ、協業発表、導入事例、HPE研究所の最新状況など、様々な発表が全世界に向けて行われました。

参加者 10,000 人以上、基調講演のライブストリーミングは 17 万人が参加した、世界中から注目を浴びている本イベントを、現地参加した2人の HPE エバンジェリストで総括していきたいと思います。

会社戦略

３日間のイベントのうち、初日と 2 日目には HPE の CEO である Meg Whitman（メグ・ホイットマン）をホストとする基調講演がありました。

その場で Meg が繰り返し述べていたのは
Digital Disruption（デジタルによる創造的破壊）です。

HPE は分社化前の 2014 年から New Style of Business をコーポレートメッセージに掲げ、より具体的な活動として Digital Transformation（デジタルによる変革）を進めています。Digital Disruption はこの 変革 を加速するためのツールです。

日本の皆さまであれば、この Digital Disruption を「破壊的イノベーション」と捉えると理解が早まるのではないでしょうか？ビジネス書として日本でも広く知られる「イノベーションのジレンマ」に登場するキーワードです。破壊的イノベージョンと呼べるほどの新しいテクノロジーを使い変革を加速する―――。

これが今回のイベントのテーマであり、今後の HPE の戦略となります。

最新の「変革」事例

変革（Transformation）は確実に進んでいます。

基調講演では、各業界のリーダー企業に登壇いただき、HPE の Digital Transformation 製品・サービスの導入事例を発表いただきました。

Microsoft　Bret Arsenaut 氏（CVP & CISO）

社内ITのサイバーセキュリティ対策として HPE セキュリティ製品を導入。
採用製品：　HPE ArcSight、HPE Fortyfy

Dropbox　Drew Houston 氏（CEO、共同設立者）

ほぼすべてのインフラを AWS に委ねていたが、そのうち 90% をオンプレミスに回帰。
採用製品：　HPE ProLiant サーバー、HPE CloudLine サーバー、HPE Financial Services

New York Genome Center　Toby Bloom 氏（Deputy Scientific Director & Ph.D）

ゲノム研究のビックデータ分析エンジンとして HPE Vertica を採用。
採用製品：　HPE Vertica

Boeing　Ted Colbert 氏（CIO & Senior VP）

航空機設計の HPC 基盤として、水冷スパコンなど HPE Apollo シリーズ全面採用。
採用製品：　HPE Apollo 8000、HPE Apollo 6000

The Home Depot　Matt Carey 氏（CIO）

全米 2,200 店舗の無線 LAN に HPE Aruba 製品を採用。週 11 店舗のペースで導入中。
採用製品：　HPE Aruba Wireless

世界中から 17 万人がリアルタイムで視聴するなど、Discover の基調講演は毎年注目いただいてます。日本のメディアにも取り上げられています ので、ご興味のある事例などありましたらご覧ください。

また、その中も Dropbox 様の事例（オンプレミス回帰）につきましては、内容のインパクトもあり、単発記事で取り上げられています。

ITpro  ニュース「Dropbox、自社クラウドインフラ構築でHPEと提携」
ZDnet Japan　   「ドロップボックスのCEOがハイブリッドクラウド戦略を明かす--HPEと提携」

Docker 社との戦略的提携

実はもう 1 社、基調講演に登壇された企業があります。
アジャイル開発もサポートするコンテナ技術で、昨今とても注目を浴びている Docker です。

Docker 社と HPE は、この Discover イベントのタイミングでエンタープライズ市場をターゲットとする、サーバーベンダーとして初めての Docker 社と戦略的提携を発表しました。

基調講演およびプレス向けのカンファレンスに登壇した同社 CEO の Ben Golub 氏は、HPE Hyper Converged システムや Synergy、OneView を通じてアプリ開発についても HPE のような コンポーザブル を目指す、力強く話していました。

Docker 社との戦略的提携のうち、第１弾となる今回の発表は主に下記のとおりです。

Docker Ready コンバージド / コンポーザブルシステム
HPE Synergy、HPE BladeSystem、HPE Converged System、HPE Hyper Converged
共同検証したリファレンスアーキテクチャを提供開始

Docker Ready サーバー
HPE ProLiant、Apollo、Cloudline

エンタープライズグレードの Docker サポート
HPE による 24x365 のエンタープライズ保守サポート
HPE による エンタープライズ向けコンサルティング

製品連携 （今後順次リリース）
HPE 3PAR (Native Volume)、HPE Distributed Cloud Networking (DCN)
HPE OneView、SiteScope

詳しくは、プレスリリースや国内メディアの記事をご覧ください。

HPE プレスリリース「Hewlett Packard Enterprise and Docker Partner to Power Distributed Applications Across Hybrid Infrastructure」
マイナビニュース「米HPEとDockerが提携 - アプリケーションとインフラでコンポーザブルを実現」
ZDnet Japan 「HPEとDockerが提携、「Docker Ready」なサーバ提供へ--その要点は？」
Publickey 「Dockerと米ヒューレット・パッカード・エンタープライズが戦略的提携、Dockerレディなサーバ製品群を発表」

また、Docker については、弊社 OSS/Linux エバンジェリストの 古賀政純 が ITmedia で連載していますので、ご興味のある方はご覧になっていただければと思います。

ITmedia エンタープライズ  「古賀政純の「攻めのITのためのDocker塾」」

各製品・サービスに関する発表

基調講演の動画は YouTube でフルバージョンが公開されています（Day1・Day2）。
英語となりますが、YouTube は自動で字幕表示してくれる機能があり、個人的におススメです。

さて、Discover 開催期間はサーバーやストレージといった各製品事業からも新発表が行われ、展示会も非常に賑わいを見せていました。次回 はこれらについて、詳しくご紹介していきたいと思います。

写真：会場で展示されていた IoT 向けコンピュータ
（本稿執筆時、日本では販売開始されておりません）