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Yoji_Inoue

ハイパーコンバージドの取扱説明書 2:正しいクラウドとの比較方法

Cloud or onpremise.jpgハイパーコンバージドは導入や拡張、さらには管理の簡単さから、クラウドと比較されることも少なくありません。特に最近では「TCOを計算したらハイパーコンバージドのほうが安くなった」という声も多く聞きます。では正しい比較を行うにはどのようなことを考慮しなければいけないでしょうか? 今回はその比較項目について解説します。

  

 クラウドファースト神話を崩壊させたHCI

従来のITインフラストラクチャーは個別のサーバー、ストレージ、ネットワーク機器で構成され、設計、導入、運用、拡張に多くの時間と人員が費やされていました。それらを全て解決できるクラウドに注目が集まったのも無理はありません。しかしながらその時代の常識はハイパーコンバージド(HCI)の出現により過去のものになるかもしれません。以下がその理由です。

  • パッケージ型なので設計プロセスが大幅に簡素化される
  • 簡単ツールで実装の際に必要な作業がほとんどない
  • ハイパーバイザー管理ツール統合によって運用が簡素化される
  • VM 中心の管理が可能なため、ストレージ関連のタスクが簡素化される
  • 2ノードからはじめて拡張が簡単にできる

いずれもクラウドが選ばれる理由に一致していますね。 もちろん利用条件、要求されるサービスレベルによってどちらかが必ず有利というわけではありません。このBlogでは、米コンサルティング会社 Evaluator Group社のシニアアナリスト、Eric Slack氏がまとめた内容をベースに、正しいTCO(総合コスト)を計算する際に注意すべきポイントを5つに絞り解説します。

 

ポイント1 TCO計算に入れるべき項目の選定

今回紹介する比較対象は、代表的なハイパーコンバージド製品であるHPE SimpliVity 380とパブリッククラウドの代表格Amazon 社のEC2 クラウドコンピュートサービスです。ここでは206台の仮想マシン(VM)に必要なリソースを想定してそれぞれの仕様を決定しました。

  ハイパーコンバージド(HPE SimpliVity 380)の選定項目

オンプレミスの場合、ハードウェア、ソフトウェアの合計である購入コスト(CAPEX)と、サポート、管理にかかる費用の合計である運用コスト(OPEX)両方を含める必要があります。またサービスレベルに応じて、可用性も考慮に入れる必要があります。一般的には1台が動作しなくなっても事業が継続できるようにN+1構成で計算します。ここで「N」は必要なリソースを提供するために必要なノード数で、「+1」は「1ノードが停止しても性能劣化はありませんよ」という数です。2ノード停止しても良い構成であれば「+2」となります。今回はN+1構成で計算するため、3 ノードクラスター構成で見積もりました。また運用期間も決める必要があります。今回はクラウドの課金モデルと比較しやすいように3年としました。

  1. HPE SimpliVity 380 の取得価格
    – 3 台のHPE SimpliVity 380 の定価に標準的ディスカウントを適用

  2. HPE SimpliVity 380 の運用コスト
    – 3 年間のサポートコストには標準的ディスカウントを適用

  3. vSphere のライセンス
    – 2 CPU /ノードで、定価から10% のディスカウントを想定した3 年間のコスト

  4. vSphere のサポート
    – 上記ライセンスのサポートコストにディスカウントを適用

  5. 電力、冷却、ラックスペース
    - ノードあたり1 か月100 ドルを想定した3 年間のコスト

運用コストの総額のうち、最大の割合を占める構成要素はおそらく管理コストでしょう。管理コストは製品によってかなり金額差が出るのですが、HPE SimpliVity 380 は従来のハイパーコンバージドの管理の簡略化に加え、別途必要だったバックアップ機能を内蔵したり、管理ツールをvCenter内に統合したりすることで、更なる簡略化を実現しています。そのため管理コストは少なめに見積もることが可能です。今回はノードあたりに必要な人員に関して、以下の計算式を使用しました。

管理コストの計算例
正規従業員の1 時間あたりのコスト (15 万ドル/ 年 = 75 ドル/ 時) x 各ノードの管理に必要な時間 (1 時間/ 週)x 52 週 x 3 年

 

Amazon 社のEC2の選定項目

  1. 利用する地域 
    -  地域により価格が違うこともあるため (米国東部) 

  2. コンピュートのインスタンス(環境)
    –「 m3.medium」、vCPU x 1、3.7GBメモリ使用率 100%

  3. EBS ボリューム (ストレージ容量)
    – 各インスタンス毎に、100GB の「汎用SSD」ストレージを選択

  4. EBS IOPS (ストレージ性能)
    – 各インスタンス毎に、この100GB ストレージ用に300 IOPS を選択

  5. EBS スナップショット (ストレージ変更分)
    – 各インスタンス毎に、毎日10% の変更を選択

  6. AWS へのデータ転送受信 ( イン)
    - インスタンス103 台あたり1 か月に1TB のデータがAWS にインポートされると想定

  7. AWS からのデータ転送送信 ( アウト)
    - インスタンス103 台あたり1 か月に3TB のデータがAWS からエクスポートされると想定

  8. VPC ピアリングデータ転送 (AWS 内のEC2 インスタンス間で転送される容量)
    – 103 台あたり1 か月に6TBと想定

  9. AWS サポート
    - すべてのAWS サービスをカバーするビジネスサポートを選択

  10. 支払方法
    - オンデマンド、リザーブド1年、リザーブド3年 
    等の選択
    これは純粋なコスト計算とは異なりますが、支払方法によってかなり価格に差が出ることに注意すべきです。たとえば今回の場合、4種類の支払い方式で試算していますが、最高値と最安値の間には60%以上の開きがあります。


上記の条件からVM(仮想マシン)1台分のコスト総額を比較した図が以下になります。

AWS vs SVT TCO month.png

 

ポイント2 複数年使用する場合、単純な掛け算はNG 

オンプレとクラウドの比較で気を付ける点は、クラウドが毎年の支払い料がほぼ一定なのに対して、オンプレは2年目、3年目になると初年度の購入費用がなくなること、また拡張することで仮想マシン1台当たりのコストが下がるケースが多いことです。以下は3年間の両社のコストを比較したものです。これを見るとかなりの差が発生しています。

AWS vs SVT TCO 3years.png

 

ポイント3 クラウドは支払いプランが重要

以下のグラフはHPE SimpliVity380とAWSの3年間のコストを支払い方式別に比較をしたものですが、クラウドの場合携帯電話の契約と同じように、長期に利用する場合は安いコストで契約できます。しかしながら途中で解約しても毎月の支払いは続きますので注意が必要です。一般的には時間ごとに課金されるオンデマンドと、ある一定期間契約をするリザーブドインスタンスがあり、後者では1年、3年といった期間が選択できます。3年契約はもちろん安いのですが、3年もすればCPU、メモリー、ディスク容量はかなり変わってくることが想定されますので、その所を十分に吟味してプランを選ぶ必要があります。

AWS vs SVT TCO.png

 

 ポイント4 可用性の比較は困難

 通常オンプレミスのインフラストラクチャーの可用性は高く、99.999%(いわゆるファイブナインズ)以上を想定していることが多いのですが、パブリッククラウドの場合はそれよりも低いケースが多いです。今回のWhite Paperの場合、EC2の可用性は99.9%となっています。このブログを執筆している2018年4月現在では 99.99%に改善されていますが、それでも年間ダウンタイムに換算すると約52分となります。もちろんこの数値は保障するものではなく、この値を下回った場合はサービスクレジットが支払われる(料金のディスカウント)ことになります。

 

ポイント5 オンプレでも月額課金できる

ここまで読み進んできて、「あれっ? オンプレミスの場合は急な拡張ができないので、クラウドとの比較はできないのでは?」そう思われた方も少なくないでしょう。確かにクラウドの良いところは「すぐに始められて、リソースが足りなくなったらすぐに追加できる」ところにあります。従来型のハイパーコンバージドであればそのような点が気になることも多いと思いますが、HPE SimpliVity380は以下のような理由で限りなくクラウドライクな運用が可能です。

  • そもそもスケールアウト型なので拡張が早い
  • インライン重複排除・圧縮でデータが急に増えない
  • メモリー、CPUが不足したら汎用サーバーが追加できる
  • オンプレでも従量課金ができる

 特に最後のオンプレでの従量課金HPE GreenLakeフレックスキャパシティはHPEが数年前から業界に先駆けて始めたもので、日本でも多くの実績があります。このサービスのユニークなところは、単なる従量課金ではなく、最初から使わないサーバーを設置しておいて、リソースが足りなくなったら電源を入れてすぐに使えるようにできることです。もちろん使っていない間はそれらのサーバーは課金されることはありません。この仕組みにより、オンプレでも急なリソース不足に対応できる、まさにクラウドライクを提供できるのです。

 

FlexCapacity.png

HPE GreenLakeフレックスキャパシティ

 

 関連リンク

本記事で参考にしたEvaluator Group社のレポート
クラウドに対するハイパーコンバージド インフラストラクチャのコスト競争力

 

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作者について

Yoji_Inoue

Technology Evangelist, Composable Infrastructure, Software Defined Data Center and Cloud Technology Architect, Hyper Converged, Storage, Memory centric-Data driven computing, Specialist