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Yoji_Inoue

メモリーがコンピュータになる日

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皆さんがコンピュータというとCPU、メモリー、ストレージ、ネットワーク、そしてソフトウェア、これらを組み合わせたものというイメージではないでしょうか ? でも究極のコンピューターともいえる人間の脳はどうでしょう?果たしてこれらの部品に分類することができるでしょうか?もしかしたらこんな分類自体がナンセンスなのかもしれません。今回はちょっと未来の話をしてみたいと思います。

 

 

人間の脳の構成要素はコンピュータと同じか?

 現在の形のコンピューターはノイマン型と呼ばれるもので1946年に発表されたENIACが最初と言われています。それから70年以上、基本的にコンピュータというものの構成要素はさほど変わっていません。演算をするCPUとメモリー、そしてデータをためておくストレージとそれをつなぐネットワークですね。一方人間の脳はそのような構成にはなっていないようです。記憶する神経細胞がシナプスで複雑につながれている、そんなイメージでしょう。まだ完全に明確ではないと思いますが、特別に演算する場所がありそこにデータを移動して処理するのではなく、データは超並列に分散記録されていて、演算も超並列にメモリーからダイレクトに行われる、観測すると神経細胞を介してパルスで情報伝達や計算のようなものをしているそうです。つまりここでは「演算素子」といった要素があるわけではないのです。これを現代のコンピュータの要素に置き換えてみると、CPUがない状態で超高速演算ができることになります。もはや「演算」とは呼ばないのかもしれませんね。

 

CPUが無くてもコンピュータは実現できる?
 地球上の動物の中でも、霊長類のトップに君臨する人間の脳は、演算速度は数十ペタ(ペタは千兆)FLOPS(浮動小数点演算)にもなるといわれています。でも驚くことにデータ処理の速さを表すクロックは極めて低いのです。今ではパソコンでさえGHz(ギガヘルツ)単位のCPUを搭載していますが、人間の脳のパルスはまったくけた違いに低いのです。
具体的にはアルファ波で9-12 Hz、ベータ波で14-28 Hz、ガンマ波でさえ40-80 Hzと言われています。つまりパソコンに搭載されているCPUのクロックより1億倍も遅いことになります。それでいてこれだけのパフォーマンスが出せるのは、人間の脳細胞が極めて多くのネットワークでつながっていて、超スーパー並列処理ができるようになっているからだと考えられます。
個人的な見解ですが、メモリーも、CPUのような演算素子も、基本的にONかOFFの切り替えで成り立っています。つまり極論すればメモリーでも演算できるということにもなります。CPUとメモリーとそれをつなぐネットワーク、ここからCPUを無くしてメモリーとネットワークにすれば? とても単純な構成にできます。また必要に応じてメモリーを演算に使ったり、その逆もできそうです。

 

カークはニヤッと笑ってこう言った「もしかしたらそんなこともできるかもよ」
 HPEでは以前からThe Machineという次世代のコンピュータの開発を進めてきました。その1つの構成要素技術が次世代のメモリー、メモリスター等の次世代不揮発性メモリーで、DRAM並のスピードを持ちながら、電力が無くてもデータを保存できることから、ストレージのような特性を兼ね備えたメモリー、「ストレージクラスメモリー」などとも呼ばれています。実は4年前にこのThe Machineの開発チームリーダーであるカーク(Kirk Bresniker:HP Labs システムリサーチ担当チーフアーキテクト兼HPEフェロー )と直接話をする機会があり、前述のような話をしたのですが、その時彼はいやりと笑い「メモリスターはCPUほど高速ではない」、でも「人間の脳の情報伝達速度は実はかなり遅いんだよ」と説明してくれました。

 

数百万FLOPSを20Wで実現する低消費電力がすごい
 現在各国が国の威信をかけて開発しているHPC(High Performance Computer)はどれだけ多くの並列演算処理できるかで性能を引き出すことが普通になっていますが、その分消費電力も半端なく大きいです。これから先その電力量はどれくらいになっているのでしょうか?もしかしたら小さな発電所の発電量に匹敵するくらいは消費してしまうかもしれないですね。世界のコンピュータをランキングしているTOP500というサイトによれば、2016年11月現在で世界最速のコンピュータは、93ペタFLOPS以上の性能ですが、使用するコアは1000万個以上、消費電力に至っては15メガワットが必要です。 一方それと同等以上の処理能力があるといわれる人間の脳はこれらの超大型コンピュータよりもはるかに小さく、軽く、そしてなんといっても省エネルギーです。人間の脳の消費電力は20Wとも言われています。なんだかうす暗くて心もとないですか? しかしたった20Wで世界最大のHPCよりも性能が良いのですから、驚異的な効率です。

 

数年後HPEはそれを実証した
 さて最近ではいろいろな会社が脳のアーキテクチャーを模した研究を進めています。いわゆるブレインコンピュータとか、ニューロモーフィックとかコグニティブコンピューティングとか呼ばれる分野ですが、HPEでも似たような研究をしています。面白いのは、多くの会社が脳型コンピュータのCPUを作っているのに対して、HPEはメモリーを大量のネットワークでつないだものを研究していることです。実はこのメモリーには電力が無くてもデータが消えないメモリスターという次世代メモリーを使用しているのです。2016年のDiscoverというイベントでデモンストレーションをしているので、興味がある方は以下ビデオをご覧ください。nuromorphic.jpghttps://www.youtube.com/watch?v=tABpRpBW6h0 (英語のみ 13分20秒くらいから)

このビデオを見て4年前の記憶がよみがえり、なんとなく武者震いが止まらなかったことを覚えています。

 

【関連情報】

過去の次世代メモリーの記事
http://ow.ly/nLTN308RKTz

The Machine
https://www.labs.hpe.com/the-machine

 

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作者について

Yoji_Inoue

Technology Evangelist, Composable Infrastructure, Software Defined Data Center and Cloud Technology Architect, Hyper Converged, Storage, Memory centric-Data driven computing, Specialist