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子供達が大型コンピューターとAIを学ぶ ~ HPE Family Day 2023 ~
2023年8月にHPEファミリーデーを開催しました。今年も、コンピューター教室の講師を務めました。
昨年とほぼ同じ内容ですが、今年も業務用の大型コンピューター(=サーバー)の解体ショー、そして、人工知能(AI)の一種である深層学習のデモを行いました。
■コンピューターの歴史、それは、大きさ、密度、電力、計算能力
IT系の教科書などで見たことがあるコンピューターの歴史。よくあるのが、半導体の集積密度の向上や性能向上の話が話題になりますが、コンピューター自体の大きさや、動かすためのに必要な電力量なども、歴史を紐解く上で非常に重要です。
1940年代のコンピューターは、今の電卓よりも圧倒的に性能が低いものでしたが、その大きさは、会議室いっぱいに並べる必要があったほどで、真空管とよばれる部品を大量に使用していたため、消費電力も膨大なものでした。
会議室いっぱいに並べられた非常に巨大なコンピューターが、年を経るにつれ、どんどん小さくなり、個人で使うコンピューターであるワークステーションやパーソナルコンピューター、いわゆる、パソコンになっていきます。筐体は小さくなったのにもかかわらず、できる仕事の量と複雑度は、飛躍的に向上していきましたよ、という話です。
しかし、世の中、いつの時代になっても、より複雑な問題を素早く解きたいというニーズはなくなることがありません。解かなければならない問題の数、量も増え、「いくらあっても計算能力が足りない!」という状況は、今でも続いています。
「性能が向上しつつも、コンピューターの筐体が小さくなってきて、会議室の大きさだったものが、パソコンの大きさになったり、スマホの大きさになったから、よかったね」という単純な話で済めばいいのですが、世の中には、パソコンやスマホでは全く太刀打ちできない膨大な計算をしなければならない問題が山積しています。
例えば、薬の開発、天気予報、自動運転のAIの開発、ロケットや飛行機の開発、宇宙物理学におけるシミュレーション、ゲームのユーザーのニーズの解析、工場設備の故障診断などは、膨大な計算能力が必要です。当然、パソコン1台では無理なので、どうしても、大量のCPUやGPUを載せてガンガンに冷却する大型の筐体のコンピューター、いわゆるサーバーが必要になるわけです。
そういった薬の開発や天気予報や飛行機の開発に必要だということが理解できれば、「コンピューターが小さくなっていったからパソコンになった」という話で終わらず、逆に、大型コンピューターである「サーバー」の存在意義の理解が進みます。
で、昨年同様、筆者のセッションは、小学生高学年以上が対象なのですが、今年の参加者の小学生の皆さんも、「ものすごいたくさんの計算には、おっきなサーバーが必要」って言ってくれる声が聞けたので、みなさん最後にはキチンと理解できていたようです。
法人向けの大型コンピューターを知らない一般の方だと、どうしても「コンピューター=パソコン」というイメージが先行しがちです。しかし、1940年代から性能が向上し続けて、コンピューター自体がどんどん小さくなっていったとしても、実は、世の中の企業や公共システムを支えているのは、タンスや冷蔵庫の大きさのラックに積まれた大型コンピューターなんですよ、と実機を見せると、「社会基盤を支えている裏方」を理解してもらえます。なので、実感を得るために、サーバー機器の実機展示は、非常に重要なわけです。
■サーバー機器のパーツを見るのが初めての社員も沢山いる
HPEは、ご存知の方も多いかもしれませんが、サーバー機器、ストレージ機器、ネットワーク機器、そして、ITインフラの技術コンサルティング構築部隊、障害対応を行う保守サポート部隊から構成されており、みなさんの会社と同様、様々な部門・部署で構成されています。ですから、社員の中には、職務上、大型コンピューターであるサーバー機器や、それに接続されるストレージ機器、法人向けの高速通信用ネットワーク機器の実物に触れたことがない社員も当然います。
「300万円するグラフィックボード、いつも、古賀さんの記事や資料で『絵』は見たことがあるけと、実物に触れたのは初めて」という社員の方もいます。当然、子供達も初めてなのですが、実物を触れられるというのは、社員やそのご家族にとっても「新鮮」なのです。そういった「普段触れたことが無い実物に触れられる、間近で見ることができる」というのは、ファミリデーならではの体験です。
ご家族の方が、「お父さんやお母さんがいつも自宅の机でパソコンに向かって、にらめっこしている仕事は、こういった『でっかいモノ』を相手にしている仕事なんだ」と理解できるチャンスなわけです。
■中高生のPCゲーマーの方々も興味津々
HPE社員のご子息の方には、ゲーミングPCに詳しい、いわゆる「ゲーマー」の中高生の方々もおられました。ゲーミングPCの世界は、非常に高速なCPU、メモリ、SSD、グラフィックボード(GPU)で構成されますが、サーバーのものとは当然性能も耐久性も異なります。ゲーマーの中高生の皆さんも、さすがに、サーバー用CPU、サーバー用メモリ、サーバー用SSD、サーバー用GPUの実物に触れるのも見るのも初めてだったようで、特に、スペック(性能)面での話題が盛り上がりました。
ゲーミングPCで求められる性能や目的と、サーバーで求められるスペックや性能、目的は全く異なることは、すでにご存知だったようで、ゲーミングPCにゲームを配布する巨大なゲームサーバーにもサーバー機器が使われているということもすでにご存知でした。ゲーム配信に利用されるサーバーの実機を見ることができたので、PCゲーマーのご子息の方が、「オンラインゲームの裏側を知った気分」と表現されていたのが非常に印象的でした。
このように、サーバー実機を知ると、その業務の裏側を知った気分になれるというのもファミリデーならではの体験なので、実は、このセッションの最後の「非常に高価なサーバーの本物のパーツに触れる時間」は、結構、社員やご子息の方々の間で、かなり盛り上がるのです。
■2024年度の新卒内定者の方々も参加されました
また、今回は、2024年度の新卒内定者の方も複数名参加されました。最近、弊社では、新卒内定者がファミリデーへ参加したり、会社の仕事内容を入社前に知ってもらうとった「人材開発を見据えた人事部主導の取り組み」を推進しています。自分達が社会人になったときに、どんな職場でどんなモノやサービスをどのように取り扱うのだろう、といったことを知ることができるわけです。今回は、新卒内定者の方々にHPEの取り組みや法人向け製品を知ってもらうことができましたし、新卒内定者の方々とお話ができて、非常に有意義な時間を過ごすことができました。
■今年からAIを動かすコンテナエンジンを変更
昨年と同様、筆者のコンピューター教室では、画像認識の人工知能(AI)を理解できるセッションがあります。AIが写真の中の人物や車や動物を認識するデモです。当然、AIそのものの重要性を小学生や社員のご子息に分かりやすく説明するのですが、昨年同様、犬と馬を間違えるAIを使って「AIも、大量の画像を学習するという『計算ドリル』が必要だよ」ということを知ってもらいます。
で、このAIを動かしているのは、昨年と同様に、コンテナエンジンで動かしているのですが、実は今年はちょっとITモダナイゼーション(ITの近代化)を行いました。
少し技術的な話をすると、実は、今年から画像認識AIアプリは、巷で広く普及しているDocker(ドッカー)コンテナエンジンではなく、containerd(コンテナディー)というコンテナエンジンで動かしています。ご存知、Dockerは、複数の軽量なアプリ環境を複数大量に動かすことができるエンジンであり、仮想化ソフトウェアに比べて、性能劣化がなく、すぐにアプリ環境を作ったり消したりできる優れものです。しかし、最近、Dockerに代わって、containerdとよばれるコンテナエンジンにも注目が集まっています。基本的に、Dockerと同じコンテナを動かすエンジンで、なんと、このcontainerdは、Dockerイメージ(Dockerコンテナの元となるタネのようなもの)のtarアーカイブファイルを登録できます。すなわち、今までのDocker環境の資産は、そのままcontainerd環境でも使えます。「そのまま使える」ということは、Docker環境のアプリをcontainerd環境に簡単に移植して使える、いわば「お引越し」が簡単にできるわけです。なので、今回、筆者のAIデモのDockerイメージは、Docker環境においてtarアーカイブファイルとして保存し、そのままcontainerd環境にコピーし、すぐに動かせました。
ちなみに、containerdは、弊社のコンテナ基盤ソフトウェア製品であるEzmeral Runtime Enterprise(エズメラル・ランタイム・エンタープライズ、通称、ERE)でもコンテナエンジンとして採用されています。また、EREでは、複数のコンテナを管理する仕組み(コンテナオーケストレーション)を提供するKubernetes(クバネティス)でコンテナを管理しますが、Dockerではなくcontainerdで動くコンテナを管理する仕組みを採用しています。
ファミリデーでは、当然これらの技術的な話を全くしませんが、裏側では、ひっそりと、AIの実行環境のITモダナイゼーション(DockerからContainerdへの移行)が行われています。もし、containerdベースで稼働するEREに興味のある方は、筆者の「Docker実践ガイド 第3版」をご覧いただけると幸甚です。
■今後のファミリデー
今年も、筆者のコンピューター教室は、トラブルなく終えることができました。大型コンピューターの仕組み、パーツ、AIを知ってもらって、みなさん楽しそうでした。
また来年も、筆者がこの会社に在籍できれば、コンピューター教室は、続けていきたいと思います。
Masazumi Koga (@masazumi_Koga)
【書籍のご案内】Dockerコンテナ、Kubernetes、EREを学べる本
Ezmeral Runtime Enterprise(通称、ERE)は、RHELなどの普通のエンタープライズLinux OSで動作し、Kubernetesクラスター、マルチテナント、テナントユーザーなどを簡単に作成でき、既存の社内HadoopクラスターやNFSと簡単に接続できます。それらの使い勝手の良さから、証券取引所や医療系コンサルティング会社でも採用されているコンテナ基盤ソフトであり、米国の複数の調査会社からも表彰を受けています。本書では、オープンソースの素のDockerエンジンや素のKubernetes、そして、Kubernetesベースのコンテナ基盤ソフトのEREの構築手順・使用法も含めて、「Docker実践ガイド第3版」に収録しています。
●コンテナの基礎、Docker導入前の検討、無償版Docker、非特権ユーザーでのDockerのインストール
●自動化(コードによるコンテナイメージの生成:Dockerfile、YAMLファイル自動生成:Composerize)
●ネットワーキング、DockerのクラスターであるSwarmモード
●Kubernetesクラスターの構築、使用法、軽量Kubernetes(K3s)クラスターの構築、使用法
●脆弱性チェックツール
●ブラウザベースのGUI管理ツール
●ブラウザもX11デスクトップも使えない環境(仮想端末のコマンドライン環境)でのGUI管理ツール
●認証機能付きのDockerイメージ保管庫(プライベートレジストリ)の社内構築
●コンテナに対するハードウェア資源の割り当て、周辺機器の利用
●Ezmeral Runtime Enterprise(ERE)の構築手順、GUIによるユーザーへのコンテナアプリの提供
Dockerを使ったWordPressによるブログサイトの構築、社内Wikipediaサイトの構築、社員食堂のメニュー表示Web/FTPサイト、モンテカルロシミュレーションによる円周率計算、Webカメラを使った植物の監視システム、EREを使ったWebサービスの提供など、具体例を通じて、実際に手を動かしてステップバイステップで学べます。エンジニアが現場ですぐに使える一冊です。
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