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【連載】導入前のアドバイス – プロセッサー②:プロセッサーに関するHPE独自技術
この記事は2020年12月に更新されました
連載記事「導入前のアドバイス」 - プロセッサー(プロセッサーに関するHPE独自技術)編です。
前回は、サーバーの中核を担うプロセッサーについて、主要半導体メーカーのIntel / AMD社に関して、また、プロセッサーの基本技術に関してご紹介しました。
今回は、プロセッサーに関するHPE独自の技術的な内容をご紹介します。
Jitter Smoothing(Intel社製CPUのみ)
現在のプロセッサーが、負荷に応じてクロック周波数を変化させていることは説明しましたが、これには望ましくない副作用が発生します。クロック周波数を上げたり下げたり変化させる際、10~15マイクロ秒という一瞬ではありますが、プロセッサーの動作に遅延が生じてしまうのです。
通常の処理であれば、この遅延が問題になることはまずありません。しかし、サーバーの用途にとっては、このほんの僅かの時間の遅延が重大な影響を及ぼすことがあります。
特に問題となるのが金融取引に使用される場合です。株式や為替など、金融相場は常にめまぐるしく動いており、一瞬の取引注文の発注タイミングの差が莫大な利益や損失につながります。この用途でサーバーを使用する場合においては、プロセッサーがクロック周波数を変える際のほんの僅かの動作遅延が、莫大な損失につながるなど命取りになりかねないのです。その為、今まではターボブーストのようなクロック周波数を変化させる機能をOFFにしてこれを防がねばなりませんでした。
そこで、HPEは、独自のプロセッサー制御技術として、Jitter Smoothingを開発しました。
Jitter Smoothingでは、HPE自社開発のアルゴリズムにより、クロック周波数の揺らぎを抑え、プロセッサーを最適なクロック周波数に制御することで、ターボブーストなどの、プロセッサーのクロック周波数を変化させる機能の恩恵を受けつつ、安定した性能を供給可能にしました。これにより、クロック周波数の変化による動作遅延発生を防ぎつつ、プロセッサー本来の性能を発揮することが出来るようになりました。
この機能を利用するためには、iLO Advanced の適用が必要です。
Jitter Smoothingについての詳細は、下記の資料を参照ください。
https://h50146.www5.hpe.com/products/servers/document/pdf/882269-002ajpn.pdf
パワーレギュレーター(Intel社製CPUのみ)
パワーレギュレーターはHPEが開発したパワー マネジメント ユーティリティで、HPEサーバーに標準搭載されています。この機能はサーバーのBIOS / UEFIで設定可能で、オペレーティングシステムやアプリケーションのアップグレードに影響を受けません。
Intelが提供する最新のサーバープロセッサーには、プログラムで制御可能なパワーステート レジスタが搭載されています。適切なROMファームウェアやオペレーティングシステム インターフェースを使用することにより、このハードウェア レジスタを使って、P-stateと呼ばれるパワーステート(プロセッサーの周波数と電圧)を切り替えることができます。パワーステートを切り替えることにより、異なるパワーレベルでプロセッサーを動作させることができます。
パワーレギュレーターは、プロセッサーのアプリケーション負荷を監視し、選択した動作モードに基づいてプロセッサーのP-stateを制御し、プロセッサーが電源を効率的に使用できるようにします。次の4種類の動作モードを選択できます。
ダイナミックパワーセービングモード:
プロセッサーの利用率に基づいてプロセッサー速度と電力使用量を自動的に変化させます。このモードは、プロセッサーの動作を監視するのに、ROM ベースのアルゴリズムを使用します。このモードを使用すると、パフォーマンスにほとんど、またはまったく影響を与えずに全体的な電力消費を削減し、OS のサポートは必要ありません。
スタティックローパワーモード:
プロセッサー速度を下げ、電力使用量を減らします。システムの最大電力使用量の低下が保証されます。このモードは、電力供給能力が制約されている場合に有益で、システムの最大電力使用を低減するのに必要です。
スタティックハイパフォーマンスモード:
プロセッサーは、電力と性能が最大の状態で動作します。OS の電源管理ポリシーは無視されます。このモードは、性能が重視され、電力消費はそれほど重要ではない環境で役立ちます。
OSコントロールモード:
OSが電力管理ポリシーを有効にしない限り、プロセッサーは常に最大電力/パフォーマンス状態で稼働します。
HPE消費電力上限
HPE消費電力上限機能(Dynamic Power Capping)は、サーバー、あるいはサーバーグループに対して消費電力の上限(キャップといいます)を設定可能にする機能です。
設定した消費電力の限度を超えないようにサーバーを動作させる事が可能になるため、電力管理を行いやすくなります。
サーバーの消費電力が設定された最大消費電力に達しない間は何も行いませんが、設定された上限に達すると、プロセッサーの動作速度を調節して消費電力を制限します。
ハイパフォーマンスヒートシンクについて
現在のプロセッサーは動作時に非常に多くの発熱があるため、プロセッサーにヒートシンクを取り付けることが必要となっています。
特に、上位のプロセッサーを使用した場合やGPUを搭載して使用する場合は、冷却効率を良くするために通常のものよりも大きく冷却性能が高いヒートシンクが必要となる場合があります。HPEでは、このような場合に対応する為にハイパフォーマンスヒートシンクを用意しております。
特定の構成の場合には、ハイパフォーマンスヒートシンクの搭載が必須になる場合があります。詳細はシステム構成図を参照してください。
プロセッサーの選定
サーバーにどれくらいのクロック周波数やコア数のプロセッサーを選択するかについては、行う処理以外に使用するソフトウェアの課金体系なども関係します。
自身のストレージが持つデータを他のPCなどとやり取りするファイルサーバーなどは、複雑な計算を行うものでは無いので、クロック周波数もコア数もそう高いものは不要であると考えられます。但し、ストレージ内のデータを暗号化し、その暗号の生成をサーバーのプロセッサーに行わせる場合や、RAIDを構築してその冗長化のための演算をアレイコントローラーではなくサーバー自身のプロセッサーで行うソフトウェアRAIDの場合は、それなりに演算性能が要求されます。
Webサーバーも、自身の持つデータを他のコンピューターに提供するという点では同じなので、単にWebサイトなどのデータを公開するものであれば、そう高い性能のプロセッサーは不要であると言えますが、Webサーバーでも、フロントエンドでアクセス数が特に多いものではそれなりにプロセッサーの処理性能が必要でしょう。
アプリケーションサーバーやデータベースサーバーについては、サーバー自身が様々な処理を行うため、高いプロセッサーの能力が必要とされます。しかし、それぞれのサーバーソフトウェアの課金体系がプロセッサーのコア数によるものであったり、また物理プロセッサーのソケット数によるものであったりと色々ありますので、その点も考慮に入れて選択する必要があります。例えばソケット数による課金であれば、1ソケットのサーバーにコア数の非常に多いプロセッサーを搭載するといった形の方が、全体としてのコストの削減につながります。
サーバーをハイパフォーマンスコンピューティング用途で使用する場合は、複雑な計算を多数のノードで並列して高速に処理する必要がありますので、クロック周波数・コア数共に高いものが必要です。
サーバーを仮想化する場合は、1台の物理サーバーにいくつの仮想サーバーを構築するかにもよりますが、仮想サーバーにコアを割り当てる関係上、コア数の多いプロセッサーを搭載する必要があるでしょう。
使用するサーバー ソフトウェアによっては、マルチスレッドに対応していない、複数のコアや、ハイパースレッディング(Intel) / SMT (Simultaneous Multi-Threading) (AMD)といった機能を持つプロセッサーに適切に仕事の割り振りが出来ず、1つのコアだけに仕事をさせる仕様のものもあります。この場合、コア数の多いプロセッサーでも働くのは1つのコアだけとなってしまうので、コア数の多いプロセッサーを選択する意味が無くなってしまいます。そのため、使用するソフトウェアがマルチスレッドに対応していないソフトウェアを高速で動作させるには、コア数は少なくてもクロック周波数が高いものが処理は速くなります。各ソフトウェアの対応については、ソフトウェアのメーカーにお問い合わせください。
最後にプロセッサーの名称および型番について触れたいと思います。
プロセッサーの名称及び型番について - Intel Xeonプロセッサーの場合
現在のProLiant Gen10サーバーではXeonスケーラブル プロセッサーの第一世代と第二世代がサポートされています。第一世代はSkylake、第二世代はCascade Lakeというコードネームが付けられています。
Intel Xeonプロセッサーの命名規則と各所の意味は以下の通りです。
また、中には数字の後にアルファベットが付くものもあります。
意味は以下の通りです。
詳細は、下記Intel社の資料をご参照ください。
https://www.intel.co.jp/content/dam/www/public/apac/ja/jp/documents/guides/2nd-gen-xeon-sp-transition-guide-final.pdf
プロセッサーの名称及び型番について - AMD EPYCプロセッサーの場合
AMD EPYCプロセッサーの命名規則と各所の意味は以下の通りです。
今回は、プロセッサーに関するHPE独自技術やプロセッサーの選定や名称についてご紹介しました。本コンテンツをご参考にCPUを選定いただければと思います。
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