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コミュニケーション系サービスの現状と新しい特殊詐欺対策向けソリューションのユースケース

1.自己紹介

 
ATakagi2.jpgこんにちは、日本ヒューレット・パッカード合同会社 コミュニケーションテクノロジー事業本部の高木 淳(Takagi Atsushi)と申します。

通信事業者向けのソフトウェア製品のプリセールスを担当しており、主に IMS/音声系コミュニケーション・ソリューションをお客様に紹介しています。
 
 
 
 
2.はじめに
 
この Blog では HPE コミュニケーションテクノロジーグループ事業部の主力製品である HPE OpenCall Media Platform (HPE OCMP) を使った新しい特殊詐欺対策ユースケースについてご紹介させていただきます。
 
HPE OCMP は、いわゆるメディアサーバーと呼ばれる製品で、コミュニケーションサービスを提供するためには欠かせない音声やビデオのメディアを取り扱うネットワークコンポーネントです。
 
本題に入る前に、HPE OCMP の主戦場である、音声通信に関する国内環境を見てみましょう。
 
3.コミュニケーション系サービスの現状
 
3-1.トレンド
 
ご存じの通り、日本におけるコミュニケーションサービスのトレンドは SNS です。
LINE は今やコンシューマーコミュニケーションにおいては欠かせないサービスとして老若男女問わず利用されています。
 
当初は情報発信や情報収集での利用と友人とのつながりや承認欲求を満足させるなどの目的で広く普及しましたが、近年では個人間でコミュニケーションが可能な Direct Message(DM) 機能やメッセージ機能が追加され、多くのユーザーがこれを利用しています。
これは普段からつながっている相手と、いつものアプリでテキストも写真も通話もお手軽にできてしまう、いわゆる「スーパーアプリ」に成長してきているところが利用拡大の一因ではないでしょうか。
また、無料で通話ができるところが家族や友人間などの親しい間柄で電話需要のシフトを生み出していることは言うまでもありません。
 
YouTube、Instagram などの動画/画像系SNSでは、動画投稿や Live 配信をする/見る/参加することにより、同じ志向を持つフォロワーとコメントを通じて対話したり、オフ会などで出会いを広げたりできるところが人気の理由でしょう。
 
また、ビジネスやコミュニティ内での会議では、COVID-2 の影響でMicrosoft Teams や Google Meet、Zoom が急速に普及たところはご存じのとおりです。
 
3-2.電話サービスの今

今更ながらですが、電話・音声通話の利用頻度は年々減少傾向にあるところは皆さんも体感しているところかと思います。総務省がまとめた通信白書「通信量からみた我が国の音声通信利用状況(平成30年度)」を見てもそのような音声通信のダウントレンドはみて取れます。
 
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図-1: 「1契約当たりの1日の通信時間の推移」

 

固定系の加入者数が減少傾向にあるのに対して、移動系の加入者数は年々増加傾向にあることと併せてみると、やはり音声通話需要よりもスマートフォンによるデータ通信需要の伸びに伴う携帯電話シフトが著しいことは否めません。
 
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図-2: 「データ通信需要の伸び」


ただ、上記の通話需要はあくまでも電話網での通話量に関するもので、LINE 通話などの SNS 基板上の音声通話量を加味した平成24年から令和2年の9年間での平均通話利用時間を経年で見た場合には、著しい減少傾向ではなく低いながらも既に下げ止っているといえるでしょう。
 
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図-3: 「コミュニケーション系メディアの平均利用時間」
 
(出典)総務省「令和3年度 情報通信メディアの利用時間と情報行動に関する調査」よりデータを加工して再編集

ところでこの世の中、すべての人がスマートフォンで最高のネット生活を送れるわけではありませんよね。
内閣府による令和2年度「情報通信機器の利活用に関する世論調査」を見ても60歳を超えるとスマートフォンやタブレット端末の利用数が一気に減ってきます。

参照:情報通信機器の利活用に関する世論調査 - 内閣府 (gov-online.go.jp)

この調査では、70歳以上の方々が「デジタルを利用しない理由」として
  1.「自分の生活には必要ないと思っているから」(52.3%)
  2.「どのように使えばよいかわからないから」(42.4%)
  3.「必要があれば家族に任せればよいと思っているから」(39.7%)
  4.「情報漏洩や詐欺被害等のトラブルに遭うのではないかと不安だから」(23.2%)
  5. 「購入や利用にかかる料金が高いと感じるから」

等が挙げられているようですが、これらの状況は今スマートフォンを使っている年代が高齢化してくるにつれ、ある程度変わってくるものと想像できます。
 
一方で、身体的な問題でスマートフォンでのデータ通信は使えないという声も多く聞きます。
代表的な例では「字が小さくて見えない」、「フォントを大きくすると画面内の情報量が少なくて使いづらい」といったものです。いわゆる老眼問題ですね。
他にも視覚障がい者の方々は、スマートフォン搭載の音声アシスト機能などを駆使して利用されている方も少なからずいらっしゃるようです。
 
私たちのようなITリテラシーがある程度高い(と勝手に思っている)人間にとっても、年齢が進むにつれて「文字でのコミュニケーションよりも音声での直接的なコミュニケーションの方が早くて便利」と思う場面が多くなってきました。(個人の感想です)
 
高齢化社会
 
  1. ネットは無理
  2. スマホも無理
  3. チャットも無理
  4. そもそも小さな画面は見えない
 
ビジネスシーンを見てみると「電話」、「Web会議」のようなリアルタイムでのコミュニケーションはいまだに健在。テキストのやり取りではくみ取れないその場の雰囲気や相手の表情、言い方や表現に現れる裏の状況など様々な付加情報を得ることができるのが大きな利点です。この理由でお客様と直接会話をしたいという営業担当者も多いと思いますし、コンタクトセンターではマルチチャネル/オムニチャネル化を導入する企業も徐々に増えつつありますが、まだまだ「電話」が主流です。.

(参考)一般社団法人日本コールセンター協会「2022年度 コールセンター企業 実態調査」報告

電話サービスの利点
 
  1. リアルタイム性と口頭で伝えることができる手軽さ
  2. 声/映像による相手の表情やコンテキストの汲み取り
  3. 文字で表現しきれない情報量
  4. フリック難民保護
 
4.HPE OCMP を利用した最新のユースケース
 
それでは本題の、HPE OCMP を利用したソリューションのユースケースをご紹介させていただきます。
 
通信事業者様のネットワークで使用するメディアサーバーといえば以下のような王道的なユースケースがあります。

  • IMS MRF
  • IMS TrGW
  • VAS(音声付加価値)系サービス

通話録音、ボイスメール、IVR(音声自動応答)、FMCサービス、翻訳電話

  • 音声/ビデオ会議、WebRTC

などなど

でもそれだけではなく、近年通信各社様が直面する「社会問題対応」にも HPE OCMP は大きく貢献することができるのです。
 
例えば、高齢者を狙う特殊詐欺の多くは電話を利用して行われており、大きな社会問題となっています。
 
代表的な特殊詐欺としては皆さんご存じの「オレオレ詐欺/振り込め詐欺」といわれるもので、特殊詐欺集団が海外拠点から高齢者をターゲットに電話して、コンビニなどの ATM から大金を振り込ませるという犯罪は連日ニュースで話題となっています。
 
政府が2023年3月17日に開催した犯罪対策閣僚会議 での「高齢者の自宅電話に犯罪者グループ等から電話が架かることを阻止するための方策」によると、特殊詐欺の認知件数は令和3年以降増加、また、その被害額および検挙数も令和4年に8年ぶりに増加に転じています。この状況を鑑みて、政府は同日「緊急対策プラン」を閣議決定しました。


これに伴って、通信各社様が特殊詐欺の被害防止に役立つ各種サービスの提供を検討し始めていることもニュース記事になっているところです。
 
以下の図「音声通信ネットワークによる特殊詐欺対策」は、 HPE OCMP をベースに通信事業者様がネットワーク機能として提供可能な「オレオレ詐欺対策ソリューション」です。
 
携帯電話網向けのソリューションとしては、固定電話網で実現しているような各家庭の電話機に専用装置を接続するというようなことはできません。
このソリューションでは、携帯電話網のコア・ネットワーク内で通話パケットをキャプチャすることで、ネットワークレベルでの対策を提供可能なものとなります。
 
fig4_usecase.png

 

図-4: 「音声通信ネットワークによる特殊詐欺対策」


仕組みの概要

  1. ネットワーク内を流れる音声パケットをキャプチャ
  2. リアルタイムでキャプチャされる通話音声をテキスト化
  3. テキスト化したデータを「判定データ」として、AI 判定エンジンに食べさせる
  4. AI判定エンジンが、あらかじめ学習した特殊詐欺通話文を基に「特殊詐欺度合」を判定
  5. 判定結果を基に、サービス加入者(被害を受けそうな通話中の加入者)に対して警告アナウンスを再生
  6. キャプチャした通話音声は、別ルートにてバッチ処理でテキスト化
  7. テキスト化された特殊詐欺通話文はAI判定エンジンの学習データとして再利用

本ユースケースの利点
 
  1. 携帯電話網での特殊詐欺被害防止
  2. リアルタイムで警告
  3. 本人だけではなく、家族宛ての警告(SMSや音声)も実装可能
  4. 進化する電話特殊詐欺にも容易に追随

このサービスがあれば、高齢のご両親と離れた所に住んでいるご家族も大安心ですよね。
日本中でこのサービスが普及すれば、電話による特殊詐欺は「儲からない商売」に追いやり駆逐できるかもしれないですね。
 
5.最後に
 
今回はコミュニケーション系サービスの現状と HPE OCMP の最新のユースケースのご紹介でした。冒頭に書かせていただいた通り音声需要という観点ではテキスト系需要にもっていかれた感がありますが、経済を支えるビジネスにおいて音声やビデオによるコミュニケーションは手放せない存在であることには変わりありません。
現代社会における様々な問題も「信頼できる電話網」だからできる事も多いのではないでしょうか。
また、様々な最新のデジタルテクノロジーとリアルタイムメディア、固定/モバイル電話網を組み合わせたサービスも今後多く取り入れられてくることでしょう。
そんな時に HPE OCMP はきっとお役に立てると思います。
 

HPEでは本日ご紹介したソリューション以外にも、多くの通信事業者向けソリューションを提供しています(通信事業者向けソリューションはこちら)。
 
また、音声サービスをさらに活用するための HPE Telecom Application Server (HPE TAS) もご用意しています(HPE TAS overview)。
 
 
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作者について

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