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自動化への新しいアプローチ:インテントベース・モデリング

1. 自己紹介

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日本ヒューレット・パッカード合同会社コミュニケーションテクノロジー事業本部に所属している 安立 寛(Adachi Hiroshi)と申します。

通信事業者向けのソフトウェア製品のプリセールスを担当しており、主に自動化を実現するOSS(Operation Support System)ソリューションをお客様にご紹介しています。

 

前回「インテントベース・モデリングを活用したアジャイル開発」という内容でインテントベース・モデリングの概要をご紹介させていただきました。今回はインテントベース・モデリングのより詳細な内容を、従来自動化で採用されてきたワークフローと比較しながらご紹介します。

 

2. 次世代ネットワーク運用自動化実現の鍵:インテントベース・モデリング

前回の投稿で述べた通り、昨今の通信業界においては従来の通信サービスベースのビジネスモデルから通信サービスと多様なサービスをバンドルして差別化を図るビジネスモデルへの移行を迫られています。このようなビジネスモデルの移行に合わせて運用業務においても通信サービスを単体で提供するためのリソース中心の運用から、多様なサービスを提供するためのサービス中心の運用へと変化が求められています。

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リソース中心の運用で求められる自動化のシナリオは比較的シンプルであり、従来手法であるワークフローで実現が可能でした。一方でサービス中心の運用では制御対象が多様化することでより複雑な自動化シナリオが求められ、また市場のニーズ(インテント)に合わせて継続的な変更が必要となるため、ワークフローでは自動化シナリオの更新や拡張などのメンテナンスを継続的にかつ効率的に行うことが難しく 、新しいアプローチが必要となってきました。そこで弊社ではワークフローに取って代わる新しいアプローチとして、市場のニーズ(インテント)に柔軟・迅速に対応が可能なインテントベース・モデリングを提案しています。この”インテント“をベースに自動化を実現するコンセプトはネットワーク運用自動化技術の標準化を行うETSI ZSM ISG(Zero-touch network and Service Management Industry Specification Group)でも採用されており、次世代の通信事業者のネットワーク運用自動化の鍵となる要素技術として定義されています。次の章では従来手法のワークフローとインテントベース・モデリングの違いについてご紹介します。

 

3. ワークフローとインテントベース・モデリングのアプローチ・実装の違い

この章ではワークフローとインテントベース・モデリングに関して、以下2点のポイントで違いを説明します。

A. 自動化に対するアプローチの違い
B. 実装における違い

A. 自動化に対するアプローチの違い

・ワークフローの場合

ワークフローはサービス(インテント:What)を提供するためのプロセスに基づいて設計・実装するプロセス志向(How)のアプローチです。このWhatからHowへの変換に多くの時間を消費し、要件・設計・実装のズレが生じやすく、また設計・実装においては詳細なプロセスまで検討する必要があり、サービス提供までに時間を要するといったデメリットがありました。このため、プロセスがシンプルな自動化シナリオに対しては対応が可能でも、プロセスが複雑かつ変更が継続的に求められる 自動化シナリオには開発・メンテナンスの効率性が大きな課題となっています。

・インテントベース・モデリングの場合

一方でインテントベース・モデリングはサービス(インテント:What)に着目するサービス志向のアプローチであり、要件から設計・実装への落とし込みが正確に実施できます。また詳細なプロセスの検討は不要なため、複雑な自動化シナリオにも対応が可能です。

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B. 実装における違い

・ワークフローの場合

ワークフローの場合はサービス開通、廃止、変更といったそれぞれ個別の制御ロジック毎にワークフローを作成し、また一般的に自動化シナリオで求められるリソース間の依存関係制御や状態遷移の仕組みをワークフローの中で一から実装する必要があります(Howへの変換)。そのため提供サービスが多様化するにつれてワークフローが複雑化し、実装に時間を要します。また更新が必要になった場合は制御ロジック毎のワークフローに変更内容の反映が必要となり、工数・開発期間が大きくなる傾向があります。

・インテントベース・モデリングの場合

インテントベース・モデリングの場合はインテントに合わせて①サービスを構成する要素、②依存関係の定義、③各サービスの遷移状態でどのようなアクションを呼び出すか、を定義すればサービス開通、廃止、変更といった個別の制御ロジックは「サービス状態遷移モデル(TMF518_SA_2)」に従って動的に生成されるためHowへの変換は不要であり、ワークフローに比べてはるかに 効率的な実装が可能となっています。

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上述したA.自動化に対するアプローチの違い及びB.実装における違いにより、新サービス提供のTime to marketを大幅に短縮することが可能です。以下の図は、弊社のSD-WANサービス自動化事例におけるワークフローとインテントベースモデリングのアプローチの違いによる工数比較のグラフとなります。設計、実装、試験、リグレッション試験の各フェーズにおけるワークフロー側の見積工数を100として、インテントベース・モデリングで実装した際の実測値と比較しています。各フェーズにおいてインテントベース・モデリングアプローチによる工数削減効果が確認できます。サービスを制御ロジック中心にアプローチするワークフローに比べて、制御ロジックを実装不要なインテントベースモデリングではサービス構成のモデル定義とサービス状態遷移に注力すればよく、 実装及び試験カテゴリで大幅に工数を削減できることがわかります。リグレッション試験部分に関しても、インテントベース・モデリングでは何か変更があった場合には必要なモデルだけを更新し、変更時の影響を最小限にすることができるため工数を削減できています。工数の差分はそのままサービス提供タイミングに反映され、ワークフローによる実装の場合はサービス提供まで6か月以上かかる見積りでしたが、インテントベース・モデリングでは2か月でサービス提供が行えた事例となっています。

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HPEはインテントベース・モデリングを採用している製品としてHPE Service Directorを提供しており、通信事業者様の運用業務の自動化を支援しています。HPE Service Directorはマルチユースケース、マルチベンダーをサポートする製品で、様々なリソースを組み合わせたサービスカタログをインテントベース・モデリング手法によりローコードで迅速に実装でき、サービスオーダー受領からサービス開通までの処理の自動化、サービス異常時の復旧処理の自動化 (Closed Loop) を実現します。

 

4. 最後に

今回は「自動化への新しいアプローチ」というテーマで従来自動化で採用されてきたワークフローと比較しながらインテントベース・モデリングの詳細と利点についてご紹介しました。

HPEでは、通信事業者向けのソリューリョンとして様々なソフトウェア製品を提供しています。
HPE Service DirectorはHPE TelcoのOSS Orchestrationソリューションに含まれています。
OSSソリューションには、Orchestrationソリューション以外にも、InventoryやAssuranceソリューションも提供しておりますので、詳細はこちらの情報をご覧ください。

 

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作者について

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コミュニケーションテクノロジー事業本部は、通信事業者様向けにエッジからクラウドまでオープンソリューションを提供しています。私たちと一緒に5G、エッジ、クラウドを生かしたネットワークで新たな収益を生み出すイノベーションを推進しましょう!