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TakuKimura

HPE Ezmeral Runtime Enterprise 概要

前回のブログでは、Kubernetes(k8s)ディストリビューションの必要性について説明しました。HPEではHPE Ezmeral Runtime Enterprise(旧称HPE Ezmeral Container Platform)というk8sディストリビューションを提供しています。HPEに加わったBlueData社とMapR社の技術をベースとし、”データ利活用にフォーカスしたk8sディストリビューション“です。HPE以外のサーバー上での稼働はもちろんのこと、パブリッククラウド上での稼働もサポートし、さらにはVanilla k8sを採用することでベンダーロックインのリスクを低減しています。

今回はHPE Ezmeral Runtime Enterpriseの概要について紹介させていただきます。

 

構成とインスタレーション

Ezmeral Runtimeは以下のコンポーネントで構成されています。

  • Controller Nodes

後述の各種ノードを管理するノードです。ControllerはWeb GUIの管理画面も提供し、ノード登録や設定変更、k8sのバージョンアップ等の管理操作はこのGUI上で行えます。

  • Gateway LB Nodes

ユーザーのアクセスポイントになるノードです。ユーザーはGateway LBにアクセスすることで、管理Web GUIやkube API、k8s上で展開されたサービスにアクセスできます。

  • Kubernetes Nodes

K8sクラスタ用にControllerに登録されたノードです。k8sクラスタを作成する場合、このノード群からお好きなノードを選んでk8sクラスタを作成します。k8sクラスタ作成もControllerが提供する管理Web GUIから行うことができます。

この3種のノードを用意するだけでEzmeral Runtimeは稼働します。サポートされるOSはRHELまたはCentOSです。

インスタレーションも他のk8sディストリビューションに比べて非常に簡単です。以下のステップ構成できます。

  1. 各ノードの基本OSセットアップを行う(DNS、NTP、ネットワーク通信を可能にする)
  2. Controller Nodeで構成チェックスクリプトを実行する
  3. Controller Nodeでインストーラを起動する
  4. ブラウザでWebインストーラにアクセスしてController Nodeを作成する
  5. 管理Web GUIからGateway LB Node、Kubernetes Nodeを登録する

詳しくインスタレーション方法を知りたい方は、こちらのGitHubを参考にしてください。

Ezmeral Runtimeのネットワーク構成もシンプルです。各ノードを10Gbps以上のネットワークで繋げます。インターネット接続ができない環境もサポートしていますが、その場合、プライベートコンテナレジストリが必要になります。以下の図はHA構成でのネットワーク構成例です。

Picture1.png

内部ストレージ

Ezmeral Runtimeは、k8sクラスタ等の永続ストレージ領域として内部SDSを構成します。先述の3種類のノードには、ストレージ機能を担ったノードの記載はありませんでした。なぜなら、このSDSはk8sノードが持つディスクを使って、k8s上で構成されるからです。

このSDS領域は、EzmeralファミリーのHPE Ezmeral Data Fabric(旧MapR)がk8s上に構成されます。もちろん、Ezmeral Runtimeに使用権が付随されているのでご安心ください。もちろん、インストールを管理Web GUIから簡単に行うことができます。

Picture2.png

 Ezmeral Data Fabricを採用することで、単にk8sの永続ストレージだけでなく、大規模データの保存領域やEzmeral Data Fabric固有機能の提供、k8s上で実行されるApache Sparkとの連携、このあと説明するテナント内部の共有ストレージ領域など、データにまつわる様々な機能をコンテナの世界で使用可能にしています。これらのことから、冒頭にEzmeral Runtimeを”データ利活用にフォーカスしたk8sディストリビューション“と説明しました。

マルチテナンシー

Ezmeral Runtimeは、1つのk8sクラスタでマルチテナントの機能を提供します。k8s標準リソースのnamespaceを拡張したtenantリソースを使うことで、安全なマルチテナンシーを実装できます。このテナントも管理Web GUIから切り出すことができます。テナントの主な機能は以下の通りです。

  • テナントユーザー用Web GUIの提供
  • テナントユーザー管理
  • CPU、メモリ、ストレージ、GPUのリソース制限
  • ユーザーのアサイン(Active DirectoryやLDAPとも連携可能)
  • リソース使用状況の可視化
  • テナント内共有ストレージ、Pod間共有ストレージの提供
  • K8s Service, Istio Virtual ServiceのGateway LBへの紐付け(LBへサービス公開)
  • Web GUI内でのCLI起動
  • アプリケーションカタログ化

etc…

Picture3.png

 

個人用テナント、チーム用テナント、サービス用テナントといった様に、自社の体制に合った形で区画を区切り、柔軟かつ効率的に1つのk8sクラスタを活用することができます。

 

冒頭にも記載しましたが、HPE Ezmeral Runtime Enterpriseの位置付けは”データ利活用にフォーカスしたk8sディストリビューション“です。ビッグデータ解析やML/AI等で活用できます。

コンテナ技術登場当初は、その特性からステートレスアプリケーションで使用されるケースが多かったですが、昨今はステートフルなアプリケーション/サービスで使用されるケースの方が増えてきています。HPE Ezmeral Runtime Enterpriseは、ビッグデータ、ML/AI等での用途に限らず、ステートフルなコンテナを利用したい一般用途にも適したk8sディストリビューションです。

次回以降でHPE Ezmeral Runtime Enterpriseの機能について、もう少し深掘りしていく予定です。

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作者について

TakuKimura

Engineer