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IoT汎用Edge Point デバイスの実践活用アーキテクチャ(第1回)
みなさん、こんにちは。HPE コミュニケーションテクノロジー事業本部で通信事業者向けソリューションを担当しているプリセールスエンジニアの合津 誠人(ゴウヅ マコト)です。最近は主にIoTやCloud Nativeと言った領域で様々なソリューションを紹介しています。本日は、IoTシステムのサイロ化問題についてお話ししたいと思います。本記事は全三回のうちの一回目となります。
はじめに
20年前に10億のコンピュータ、10年前に50億のハンドセットデバイス(=人)がインターネットにつながる様になりました。ハンドセットデバイスは進化を続け、音楽プレーヤ、電話、カメラや財布、時計、地図帳、定期券、ゲーム機など、多くのモノがスマホに集約され、私達は身軽で便利に生活できる様になりました。最近10年は、人の介在なしにモノがネットにつながり自律的に稼働する、すなわちIoTの進展が期待されました。人手不足の緩和、実社会データの効率的収集(AIの糧データの自動収集)など、様々な目的のためにIoTの実証実験やプラットフォームサービスが展開されましたが、実践的な利用は未だ限定的なところに止まっています。
IoTに必要とされるデータの種類や収集場所は多様です。IoTのシステムを構築するには、デバイスやアクセス通信網、サーバ等の部位を用途に合わせて選定し、それらをうまく組み合わせる必要があります。構成部位の集約化・共有化は未だ不十分で、システム構築には多くのコストとリードタイムを要するものの、それに釣り合う収益性・規模性・継続性が見込める利用ケースはさほど多くありません。IoTの活用があまり広がっていない現状ですが、これは当然なのかもしれません。
本稿は、こういった問題の解決方法、すなわち、IoTシステムの集約化・共有化について説きます。
IoT利用の現状と課題
実社会から得られるデータは多様です。現場で時々刻々流れ続ける情報をIoTデバイス(センサ)はデータとしてキャプチャします。
対象物の多様性:
映像: 現場景観そのもの、映像中の対象物(人や車、動物等)の個体数や特定動作の有無
その他: 現場の収音、明るさ、気温、室温、風速、降雨/降雪量、振動、対象物温度(サーモグラフィ)など
対象場所(時間帯)の多様性:
データ取集場所が渋谷スクランブル交差点なのか農園施設内の拠点箇所なのか。定点ではなく車両やドローンなどの移動体の経路地点なのか。通勤時間帯なのか、夜中なのか、イベント開催時なのか。
利用ケース(アプリケーション)毎に必要なデータは様々です。その違いを全て吸収することは難しく、デバイスやサーバ設備を個別に用意、サイロ状に専用のシステムを構築することが繰り返されてきました。毎度、デバイスの調達(/開発)、通信環境の配備、サーバ側システム構築、アプリサーバの開発などを検討することから始めるため、業務利用が開始できるまでに手間と時間がかかりすぎることが課題でした。これらの課題解決のために下記のシステムの集約化・共有化をはかることは難しいでしょうか?
(1) デバイスの集約と共有 (2) センサデータの要約と共有 (3) サーバの集約と共有
利用ケースにどういった共通点や制限を設ければこれは可能となるでしょうか?
図1. サイロ化したIoTシステム
AIを使ったデータ分析技術は進化を続ける。そこへのインプットとなる実社会からのデータ入力、様々な現場で時々刻々流れている多様なセンサ情報を人手をかけずに如何に効率的に取り込んでくるか(AIは腹ペコでも不必要なものを大量にインプットされても困ってしまう)。システムがサイロ化していては十分な効率、スケールメリットが出せない。
図2. 集約化を図ったIoTシステム
デバイスの集約と共有、センサデータの要約と共有、サーバのみではなくデバイス側も含めたプラットフォーム集約。利用者(各企業のアプリサーバ)はコンパクトなメタデータのみを分析(図の桃色線)、必要に応じてフットプリントの大きな実社会データ(センサデータ)を適宜受けとる(図の水色太線)。複数の利用者が一つのデバイスを同時並行で利用(あたかも自分がそのデバイスを所有しているかの様に使用できる)。
IoTシステム集約化/共有化へのアプローチ(解決のための考え方)
現場の撮影映像からは多くの実社会情報を得ることができます。AI分析に必要な一定品質の映像が撮影できるカメラ、映像を一定時間録画できるストレージ容量、映像を素早く転送するための通信モジュール、更に以下の条件を組み合わせれば様々な用途をカバーできます。そういったデバイスであれば多くのIoTアプリケーション/サービスで共通的に利用できると考えられます。
(1) データ対象の多様性、多センサ機能を一台で賄うデバイス(カメラ、他のセンサ等もオプション実装)
(2) 始めから大量にデバイスを用意できること(十分に低コストなモノでなければサービス普及は難しい)
(3) デバイスを様々な場所に簡単かつ安全に配置でき、遠隔で自動運用できること(汎用的なデバイス管理プロトコル、LTE/5G通信モジュール、SIMが必要)
上記(1)(2)のため、検討対象のデバイス(以降、汎用Edge Pointデバイスと呼びます)は高機能、高性能、高セキュリティであるにも関わらず安価に手に入るモノでなければなりません。そんな都合の良いモノはあるでしょうか?スマホはそうかもしれません。市販のスマホには以下の実装が備わっています。
(a) OS、 (b) LTE/5G通信モジュール、 (c) SIM(デバイス認証に使う。耐Tamper、勝手に抜き差しできないもの)、(d) 周辺センサ機器(カメラ、マイク、温度センサ、光センサなど)、(e) 筐体とバッテリ
タッチスクリーン、ブラウザ、SNSアプリ、電話、等々は汎用Edge Pointデバイスには不要です。必要な実装は市販のスマホの機能のサブセットとしてほぼ揃っています。ただ、スマホに三脚を付けただけのモノでは不十分です。スマホを汎用Edge Pointデバイスに仕立てるには以下の施策が必要と考えられます。
- 不要な機能がデバイスのコスト高を招く、上記(a)~(e) だけを残し不要なものは削ぎ落す
- デバイスの設置から保守を人手をかけずに遠隔からの自動で行うための仕組み(汎用的なデバイス管理プロトコルの実装)をルート権限を持つデバイスソフトウェアで実装する。
※ ルート権限を持たないソフトウェアでセキュリティレベルの高い操作(インストール/アップデート、カメラやマイク等の周辺装置利用)を行おうとするとOSから認可確認のための人手操作を求められてしまい、遠隔自動運用の妨げとなる。
- 各種センサの性能を引き出すために最適化された筐体が必要。例えば、通常スマホのフロント/バックカメラではなく360度カメラが必要であったり、温度センサを筐体の外側に張り出して実装してデバイス本体の熱の影響を受けないようにするなど。
次回予告
次回は図2に示した通りに集約化・共通化が図られたIoTシステムの具体的な実装について、以下を使用したデモを交えてお話しいたします。
- デバイス(汎用Edge Pointデバイス)に市販のスマホ or 360度カメラ(Android OS)
- サーバ(プラットフォームサーバ)にAWS EC2のインスタンス
デモは比較的手に入り易いモノだけを使って簡単に試すことができます。デモシステムではなく、商用システムを構築する場合に留意しなければならない点については次々回に説明する予定です。
さて、いかがでしたでしょうか。皆さんでも似たようなことができるかもしれない、そう少しでも想像いただけたなら幸いです。
以上、それでは次回をお楽しみに。
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